日本モバイル建築協会 設立記念シンポジウム 開催

2021年7月8日(木)日本モバイル建築協会の設立を記念して、東京、茨城県、三重県、徳島県、大分県などをつないで、シンポジウムを開催しました。

全国各地からご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

国難級の大規模広域災害における被災者の居住福祉の向上に向けて~モバイル建築を活用した自治体間連携・官民協働による応急住宅等の社会的備蓄~

南海トラフ地震等の国難級の大規模広域災害の切迫性が高まりつつある中、被災者の居住福祉を向上させ災害関連死を防止し、暮らしの早期再建を支援する体制を全国レベルで整えることが急務です。本シンポジウムでは、モバイル建築を活用した自治体間連携・官民協働による応急住宅等の社会的備蓄の在り方と、そのための全国ネットワークづくり等について、自治体の首長、政治学、建築や防災の研究者、NPOの実践者など、様々な立場のパネリストとともに活発な議論をおこないました。

日本モバイル建築協会設立記念シンポジウム 第1部の様子

第1部

テーマ:「東日本大震災の教訓と地方創生を踏まえた国難級の大規模広域災害における地方公共団体の備えと対応」

パネリスト(敬称略)

 ● 御厨貴  東京大学名誉教授・立教大学客員教授〔当協会・顧問〕

 ● 橋本正裕 茨城県境町町長

 ● 長坂俊成 立教大学教授 〔当協会 代表理事〕

 ● 司会:宮本聖二 ヤフー株式会社ニュースプロデューサー〔当協会・監事〕

茨城県境町町長の橋本正裕さんは、モバイル建築の社会的備蓄の先進自治体である同町の取り組みについての報告に続いて、「災害時にみんなで助け合える協力体制が必要。その体制をぜひ日本モバイル建築協会でつくってもらいたい」と協会への期待を述べました。

東日本大震災後の復興構想会議副議長を務めた政治学者御厨貴さんは、「10年前は応急仮設住宅ができるまで8か月かかった。5年前の熊本地震ではトレーラーハウスによる避難所ができた。さらに5年たってモバイル建築協会が発足した。災害で助け合うことによって新しい人のつながりができていく、大切な第一歩だ」と感動をこめて語りました。

これらの期待の言葉を受けて、協会代表理事長坂は、「いろんな業界の人と力を合わせて、総力戦で連携をはかっていきたい」と決意を新たにしました。

第2部 (14時50分~15時50分)

  テーマ:「モバイル建築の普及と社会的備蓄に向けた技術的・制度的・社会的課題」

パネリスト(敬称略)

  ● 青木謙治 東京大学准教授〔当協会・技術アドバイザー〕

  ● 川口淳  三重大学准教授〔当協会・技術アドバイザー〕

  ● 中野晋  徳島大学特命教授〔当協会・技術アドバイザー〕

  ● 木ノ下勝矢 NPO法人レスキューサポート九州 理事・事務局長〔当協会 理事〕

  ● 進行役:長坂俊成 立教大学教授 〔当協会 代表理事〕

青木謙治さんは木造建築の専門家として「被災地で精神的に不安定な状態で過ごす住まいには、目に触れるところに木材を使うなどの工夫があると良い、簡便に移設できる住宅基礎の開発もこれからの課題」、

川口淳さんは三重県内で防災減災対策に関わってきた経験から「災害で命を助けるための教育は進んできた。しかしその後の中長期的な被災社会のイメージを持てていない。まずは自治体の実務者にモバイル建築の有用性をわかってもらう必要がある」、

四国で広域避難のための自治体間連携を進めている中野晋さんは「モバイル建築は目からウロコの取り組みだった。社会的備蓄は単体では難しくても、広域避難の発想から見るととても有用」、

木ノ下勝矢さんは防災アドバイザーとしてかかわっている障害を持つ人々の避難問題に触れて「たとえば避難先としてモバイル建築があってそこに行くということが決まっていれば、自助と共助を組み合わせて弱い人たちを守っていけるのではないか」と述べました。

モバイル建築という新しいものの「現物」を見せて理解を促進していくことの重要性を確認し、今後の協力について前向きな発言が相次ぎました。また、今夏に予定されているモバイル建築「全国キャラバン」にも期待の声があがっていました。

※シンポジウム詳細は近日中に当サイトで公開予定です。

※20210907追記:シンポジウムをまとめた冊子ができました。詳しくはこちらまで。

この記事を書いた人

一般社団法人日本モバイル建築協会